十勝三股を見つめて。
2016年の8月に北海道の十勝を自転車で旅しました。(その記事はこちら)その途中で十勝の最北部、十勝三股へやってきました。昼食をとった三股山荘で、面白いものを見つけました。
現在では印面がすり減ってボロボロになっておりましたが、きれいな頃のものもありました。
昭和50年代前半のディスカバージャパンのスタンプですね。旧国鉄ことJRの前身、日本国有鉄道が旅行促進キャンペーンとして行ったものですね。その一環でこの十勝三股駅でもスタンプを置いたのでしょう。
ほかにも十勝三股駅関連のものがいくつか置かれていました。
行先標や十勝三股の昔の地図、写真などもありました。
外に出てみると、ほかにも駅に関係したものが。
1キロごとに線路わきに置かれるキロポスト。76キロになっていますが、ここ十勝三股は士幌線帯広起点78.3キロなので変なのですが、後日調べてみると、一度線路の付け替えで2,3キロ増えたので、開業当時の付け替え前のもののようです。
ズバリ、駅名標もありましたが、これは字体から復元かもしれませんね。
十勝三股は廃止になった旧国鉄の士幌線の終着駅でした。帯広から北上してきた鉄道は十勝三股を経て、この先、出発した三国峠を通り、上川まで建設される予定でしたが、昭和14年にこの地まで来たところで力尽きたとのこと、戦前の技術では建設できなかったんでしょうね。それでも十勝地方の奥地である、この地まで鉄道がひかれたのは、今まで見てきた森林資源を運ぶのが目的でしょう。その名残で森林鉄道の車庫が残っていました。もう崩壊寸前ですが。
昭和29年の洞爺丸台風で大量の倒木が発生し、その処理のために多くの人が来て、住んでいたとのこと。十勝三股には昭和30年代には1000人以上住んでいたとのことで活況を呈していたようです。
その人たちの重要なインフラとして国鉄士幌線は機能していて、昭和29年に山崩れがあり、1か月鉄道が運休したときは十勝三股の住民の飢餓問題が発生したそうです。それも、並行する国道273号線が昭和36年に建設が始まり、上川との三国峠を抜ける、三国トンネルも昭和46年に完成したとのこと。平成6年まで未舗装区間もあり、冬季通行止めになっていたそうですが、道路の開通はほかの地域と同様に鉄道離れが進むきっかけになったのかもしれません。また倒木の処理も終わり、様々な要因で木材の需要が減ったこともあり、十勝三股の人口は昭和52年には5世帯14人にまで減ったそうです。
そのため、私の泊まっている糠平から十勝三股までの区間は100円の収入を得るのに22500円かかるという超赤字路線になってしまったため、昭和53年12月24日限りで、この区間をバス代行になりました。当時は国有鉄道ということで、赤字でも運行するという使命があった中で、バスにしてしまうのは、よほどの決断だったのでしょう。それでも、上川までの建設予定は法律上残っていたため、線路は残しておいて、いつでも再開できるようにしていたとのこと。鉄道と同じ扱いなので東京から十勝三股までの切符も買えたそうです。
その名残は今でも残っていて、代行バスの待合室が残っていました。
代行バスは士幌線廃止後も平成15年まで残っていたそうですが、過疎化で乗る人がほぼ0になり、今は旭川~帯広の都市間バスノースライナーみくに号が1日1往復代替しているそうで、バス停も前にありました。
待合室の中に入ると、名残がありました。さっき見たディスカバージャパンスタンプのスタンプ台。これはなかなか貴重です。
代行バス、減便のお知らせも。平成10年4月になってますね。平成3年の時刻表では3,5往復になっているので、少しずつ減っていったのですね。
待合室の向かい側には郵便局らしき建物が。
昭和の時代の北海道の郵便局舎の形をしています。ほかの方のブログを見ると、やはりここは郵便局だったそうです。郵便局自体は相当前に廃止になっていたようで、おそらく特定郵便局→簡易郵便局→閉鎖の流れがあったのかもしれません。代行バスの切符の販売の委託も受けていたようで、中には運賃表などもあるそうです。もちろん今は個人宅なので見ることはできませんが、好意で見せていただいた方もいたようです。
駅跡へ向かいます。駅跡は跡形もなくなっていました。1994年ころまで残っていたそうですが、国鉄清算事業団の土地から国立公園内のため、環境省の土地になって、跡形もなく壊してしまったそうです。まだ産業遺産という認識が広まっていなかったころの話で1990年代には各地にあったことですが、本当に残念ですね。
この写真の左側に駅はあったと思われます。これでは思いをはせることもできず、残念極まりないですね。反対側にはかろうじて切通しの跡が見えました。
両脇が少し盛り上がっているのがわかります。この先、世が世ならば、三国峠を越え、上川まで線路がつながっていたかもしれません。夢の跡ですね。
旅は続きますが、記事はここまで。